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2兆7900億円の貿易赤字は必ずしも悪では無い

2014年1月、貿易赤字が過去最大の2兆7900億円になりました。だいぶショッキングなニュースです。しかしながら、貿易赤字が必ずしも「悪だ!」とは断言できない部分もあるようです。これを機会に、貿易赤字に関する3つの誤解についてまとめてみます。

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貿易赤字とは絶対に悪である!

貿易赤字が増えると、これを「絶対に改善しなければ!」という議論になりがちです。しかしながら、状況によっては、必ずしも貿易赤字が悪いことにはなりません。貿易赤字は家計の赤字・黒字とは異なります。貿易収支における赤字・黒字は単に貿易の差額を示しているにすぎないのです。

どのような環境の中で貿易赤字になるのかで、それが良いか悪いかは変わってきます。貿易赤字が続いていても、順調に経済成長できる国も、世界には存在しているわけです。赤字=是正!という考え方ではなく、まずは、今の日本経済を見つめ直して分析する必要があるわけです。

貿易赤字は放っておいてOK

とはいえ、絶対的に悪ではないので現在の日本の貿易赤字を放っておいて良いかというと、そんなことはありません。確かに、米国のように貿易赤字が続いていても、それを上回る資金の流入があるために、順調に経済成長ができる国も存在します。

しかしながら、日本の場合は「膨大な政府の借金」という問題を抱えています。

現在、日本の貿易収支は赤字ですが、海外への投資から得られる所得(所得収支)がこれをカバーしているために、経常収支としては何とか黒字を保っている状態なのです。このまま貿易赤字が拡大して、経常収支までが赤字に転落すると、国内の資金が不足して、国債の消化余力が減少する可能性があります。

実際のところは、海外からのファイナンスを含めて考えて最終的なバランスは取れるのですが、そのようなイメージが市場に広がってしまい「貿易赤字は放っておいて良い」という考えになると、最悪のケースに至と、国債価格の下落を引き起こすかもしれません。確かに、赤字そのものに問題はなくても、市場への影響は考慮しなければならないのです。

貿易赤字解消のためにはとにかく輸出だ!

貿易赤字が増えているなら、輸出を強化して赤字を解消しようと考えるのはごく自然なことです。現に、アベノミクスでは輸出企業を支援して、貿易収支を改善することを狙っています。

しかしながら、この効果が実るのは現実的には難しいと考えた方がよいでしょう。国際収支には「発展段階説」というものがあります。これは、成熟した先進国は付加価値の低いものを国内では生産せずに海外から輸入するようになり、自然と貿易赤字体質になることが歴史的に知られています。かつての英国や、今の米国などがそうですね。

日本が再び途上国型経済に戻り、中国や韓国などと競争するのなら話は別です。ですが、このまま先進国型経済を続けていくのであれば、貿易赤字拡大はある意味、歴史の必然といってよいかと思います。

このような状況において、無理に輸出を増やそうとしても、あまり効果は望めないでしょう。投資による収益(所得収支)を拡大することで赤字転落のスピードを緩和させたり、海外から良質な資金が日本に入ってくるようにするなど、別の面からアプローチして、規制緩和・国内市場整備を優先させる方が現実的かもしれません。

その意味で、国内企業のソフトバンクやサントリーが行っている大規模な海外M&Aは、国益に貢献していると言って良いかと思います。

 

貿易赤字も、その時の経済状況を正しく分析しないと語れないということですね。毎日少しずつ、お金について勉強していきましょう。